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ただ、スピカはその事に疑問を持っている。通達は管理局のハリスから届いたのだが、裏でなんらかの力が働いていることは直ぐに予測が着いた。それでも職につけたこと、目的の彼の近くに潜り込めたことは素直に喜ぶべきだった。スピカは彼の出生に興味があるのと同時に、弟を殺したことへ罪悪感を持っているのだ。
馬車が止まり、スピカは第三警隊への庭を進んだ。第三警隊の隊員が案内した先に白髪の美しい二十歳前後の娘が椅子に座って俯いていた。
「あなたが、マナさんですか?」
スピカが訊ねるとマナは頷く。
「神様に用事があるとのことですが、間違いありませんか?」
「助けてください」
「あの、何から助ければ?」
聞き返したスピカはマナの送るのである重苦しい沈黙に少し考え込むように言った。
「わかりました。今日は僕の言うことを聞いてください。決して悪いようにはしませんから」
スピカはマナに立つように促し、外に出ると馬車を用意して貰った。
マナを馬車に乗せて移動した先は、バミューダ地区の外れに存在するユーリ邸であった。
マナは落ち着かない様子でユーリ邸を見渡していた。
ユーリ邸は空間種術で空間を歪めて構造を弄っている。そのために庭は果てしなく広く、邸の内部も複雑になっていた。一歩足を踏み入れれば迷路のような錯覚に陥る造りである。そうした複雑な邸に住んでいるのは、メイドのカリン、守銭奴のファム、兎と人間の合成で出来上がったキメラのネリーと主のユーリであった。
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