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「それで本題なんだがね、君に探し物をして欲しいんだよ」
どうやら父親を名乗るこの男は空気が読めないのだろうな、と少女は推察したのだが、それは正確であった上に、後にほぼ全ての父方の親族がKYであると知る事になる。しかし彼女もその気があるので人の事は言えないのだが自覚はどうにも無いらしい。
それにしても突然、久々に会った娘(仮)に頼み事というのも些か妙な話ではないだろうか。探し物、という語感から然程大変な頼み事に思えないが、そんなに大変で無いのなら態々頼んだりはしないだろう。
「探し物、ですか?何で私が…」
「そうだね。理由は私達が取りに行けないからかな。でも君なら取りに行けるだろう」
訝しげな少女の言葉に返された声は随分と軽やかなものだった。この言葉では、何故この男が取りに行けないのか、何故少女なら行けるのか説明されていない。愛理がその事に抗議とあっさりと「結界があるからね」と教えてくれた。
結界が張ってあるという事は、それはきっと奪われたくない物の筈だ。それを持って来いというのは、難題であるように思える。
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