心は楔、血は柵

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 窓の外の景色が木々に埋め尽くされて、もう十分以上経っているのだが、目的地に着く気配が無い。延々と続く森に少女に気付いたのか、運転手が声をかけるた。 「ごめんね、愛理ちゃん。遠いよね?」  運転手である叔父ー伊坂孝史は所謂民俗学を研究しているのだが、果たしてそれが仕事であるかどうかは姪である少女ー伊坂愛理も知らない。一応大学で講義をしたりしてはいる様子であるが果たしてそれで生活ガ成り立つのか、少女は甚だ疑問であるがそれを問いただした事は無い。だからこそ自分を引き取ったのかもしれないとさえ思っている。  愛理は母親と暮らしていたが先月、その母親が事故で亡くなった。事故の相手がどのような人物であるか少女は知らなかったが、「随分と慰謝料やらをくれたので、お金持ちでいい人なのだろうな」と思うほど多額の慰謝料を貰っており、それが目当てで引き取られても全く不思議では無い。今まで殆ど会わなかった叔父が突然自分を引き取った理由として、かなり納得出来るものだ。そうでなかった時の方がよっぽど不可解だと考えている。そう何を隠そう、彼女は少々捻くれている。     
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