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愛理の母は両親を若くして亡くし、親族と言えるのは自身の弟だけになっていた。この弟はどうにも世界中を飛び回っているらしく中々日本にいないが、姉が亡くなった知らせを受けた数日後には帰国し、葬儀に参列したのだが、その数日の間にとんでもない事が起きていた。
愛理の父親がやって来たのだ。
「愛香が死んだと知ってな」
何故、どうやって知ったのか、少女は分からなかった。そもそも母から父親の事を聞い事は無いので、目の前の男が本当に自分の父親なのか判断する材料も無い。母親が連絡を取っていたとも思えず、ただただ困惑するしかなかった。
「まあ、私の事を信用出来ないのも仕方が無い事だ」
愛理は一々、仰々しい自分の父親を不思議そうな目で見ていた。それはその仰々しさ故では無く、自分の容貌と男のそれが似ていなかった為だ。垂れた目尻に沿って引いたかのような眉毛は、少女の気の強いネコを彷彿させる目元と随分と異なったーというよりは真逆の印象を与えていた。
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