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「……合ってるよ。クラスメートの、友達が行方不明で、探すのを手伝ったんだ」
「クラスメートというのは、一緒にいた女子生徒か?」
「うん」
父は味噌汁一口飲んだ。ほう、と息を吐く。
「おかしいとは思ってたんだ。前日、固定電話で誰かに電話していたお前は、なにを話していたのかは分からなかったが切羽詰まっていた。後で履歴を確認したら相手が中学時代の先生だったから、何の用事だったのかと気にはなっていたんだ。そうしたらお前、夜 中学校にいたって言うじゃないか。どういうことだ? 行方不明の友達が、中学校にいると分かってたのか?」
父に訊かれた僕は、上手い答えが見つからずに口ごもり、代わりに煮魚をほぐして食べた。そうじゃないんだけど、そうでない理由が言えないのである。
「だんまり、か。……まぁ、あまり詮索すべきじゃないな」
父は諦めたように言った。好きにやれと決めた手前、遠慮しているのかもしれない。僕は申し訳なく思って、事情を隠しつつ話すことにした。
「クラスメートの友達を見つけたのは、本当にたまたまだよ。その友達の周辺を調べて、それらしいところを考えたら中学校だったんだ」
「……そうか」
大雑把な説明だったが、父は納得して頷いた。意外だ。性格上、根掘り葉掘り聞かないと気が済まない父があっさり身を引いた。
「お前が警察に連れられて帰ってきたときは驚いたよ。なにかやったんじゃないかとすぐ疑った。その日は帰りが遅かったし、母さんも知らないと言っていたからな。お前はずっと下を向いていたし、俺はどうしてやろうかと怒ってたんだが、警察の説明を聞くと妙に引っかかる。中学校への不法侵入ついでに捜索していた女子生徒が見つかったと言うんだから、俺はもしかしたらと思ったんだ」
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