終章  夏休みはこれから

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 肝試しをするためではなく、友達を探すために中学校へ忍び込んだんじゃないかと。目的を反転させた結果、合点がいったから僕に訊いたという次第だった。 「警察も怠慢だな。お前が探して見つけだした事実を、偶然ということにしたんだから」  父は不機嫌そうにご飯を次々と口に頬り込む。仲間さんの捜索について、警察は消極的だった。ただの家出だと思っておざなりにしていたが、彼女が虐待され傷ついていたという事実が浮き彫りになり、しかも高校生が代わりに見つけ出したとなれば自分たちの職務が問われる。だから、僕たちの嘘の証言を使って仲間さんの発見を"偶然"にしたのだ。気づかなかった。 「それはそれで、だ。俺はただ、お前が夜遊びで不法侵入したんじゃないと、確かめたかっただけだ。お母さんが、うるさくてな」  父は鼻でため息を吐いた。父より母の方が懐疑的で、僕を無視する割に心配してやきもきする性質なのだ。心中、お察しする。 「俺と母さんは、怖かったんだよ」  僕が母の姿を想像して少し笑っていると、父はそう言った。 「怖かった?」 「あぁ。お前がどこを目指して行こうとしているのか、不安だった。真っ当な人生にしてやりたいと願っていた分、いざお前を放っておこうと思ってもどこで道を踏み外すかと心配でしかたなかった。親としての期待を寄せ過ぎて、重荷になっているのは自覚しているんだがな。警察沙汰になったとなると、やっぱり気が気じゃない」 『真っ当な人生』『親として』僕にとってそれらの単語は、確かに重荷だとしか感じられない。子どものためと言いながら本当は自分のためだという事実を知っているから。父の話しぶりにも、主語が親であることが透けて見えるようで正直 耳を塞ぎたくなる。
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