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この後、まだ仕事があるんだと言って父は家を出た。僕はそれを見送ると自室に戻ったのだが、どうにも違和感が拭えない。なにかを忘れている、という感覚がささくれのように気になって頭から離れない。こうなったら別のことをして紛らわそうと積まれた文庫本に手を伸ばそうとして、着信が鳴る。相手はナナだった。
「二宮くん! 私、すっかり忘れていたわ!」
重苦しかった雰囲気が消し飛ぶ勢いで、ナナは意気揚々に話す。
「自由研究よ、自由研究! 怱々町の怪異について調べなきゃ!」
はっとした。違和感の正体とは自由研究のことだったのだ。元はナナから口実として誘い出された身、どうなるかと疑念が頭をよぎったが、彼女はなんとも魅力的な提案をしてくれた。
「もちろんやるわよ。ミーナと二宮くんと、私の三人で!」
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