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――八月中旬。
盆休みを控え、ナナの号令のもと僕らは改めて郷土資料館に集まった。退院したものの、面談や手続きで今後かなり忙しくなると知ったナナは急遽、自前の資料を展開。もうこれで良いじゃないかと言う僕の意見は無視して、資料館にあるもので補足を加えた拡大版を共同で作る形となった。
地域イベントの展示等を兼ねるだけあって館内は以外に広い。だが利用者はほとんどいないので貸切状態に近かった。小学生の勉強スペースに模造紙を広げ、お世話になった女性職員の方の力も借りつつ怪異譚マップの作成に取り掛かった。
少し休憩といってくっちゃべる、職員さんが度々お菓子タイムを挟んでくるといったタイムロスはあったが二日でマップは完成。なんともおどろおどろしい出来栄えになり、ナナは非常に満足していた。
お盆休みに入ると僕は両親に連れられて祖父母の家へ行った。怱々町と同じくらいの田舎だ、真新しいものはなにもない。ただ、心優しい祖父と祖母、家族が一堂に会したことで関係に変化があった。ぎこちなくも、母が話しかけてくるようになったのだ。口をきかなくなって約一年。長い冬が終わろうとしているのかもしれない。
お盆の最終日は漁港で行われる納涼大会だ。怱々町 町内で唯一とだけあって、この日は町内外から人が集まってくる。僕が目当てにしているのは二〇〇〇発の水上花火だ。出店の食べ物、遊びに興味はない、はずだった。
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