終章  夏休みはこれから

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 炸裂した火花の中央を、黒い影が遮った。海上八〇〇メートルの高さを飛ぶ影は、時折 翼をはためかせながら徐々にこちらへ迫ってきている。僕らは同時に席を立つと、露店の並ぶ方角へ走り出した。他の人達は花火に夢中で、接近する巨大な影に気が付いていない。ということはつまり。 「黒百舌鳥(くろもず)……!」  ナナは怱々町マップに描いた黒い鳥の名前を呟いた。黒百舌鳥は十数メートルの高さを滑空して通路を歩く人達を見渡している。花火で人が集中しているとは言え、こちらも結構人が多い。人が一人、忽然と姿を消しても分からないだろう。 「止めなきゃ!」  反対方向を歩く通行人を避けながら、僕らは露店街を走り抜けていく。  仲間さんの肩、空中を泳ぐ三匹の金魚がやけに頼もしかった。  二学期が始まるまで残り一週間。  僕らの夏休みは、まだまだこれからだ。
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