Interlude. 形の記憶

2/40
33人が本棚に入れています
本棚に追加
/342ページ
☆★☆★  唐突ですが 、皆さんは二度寝をしたことがありますか。  私はしょっちゅうありました。  例えばある日。それは、それは寝苦しい夏夜を越えて、昇る朝日から強い光を受けて瞼を開くと汗のにおいがするベッドに寝転んでいました。『あれ、さっきまで私は帰り道を歩いていたはずなのに』と思いつつ隅っこでくしゃくしゃになったタオルケットを取りますが、その数秒という時間で、いつも私は肝心である"どんな夢を見ていたのか"を綺麗さっぱり忘れてしまいます。砂時計が落ちるようにさらさらと流れ落ちていくのです。  流れてしまった夢は、なかなか思い出すことができません。ぼうっと天井を仰ぎ、何分もかけて頭の中のタンスを引っ掻き回しますが、やはり見つからず、あるはずのものがないという違和感だけが残ります。夢の内容が、両腕でしっかりと抱きしめるほど大切なものだったのか、それとも投げ捨てたくなる程度の粗末なものだったのかは別として、私は毎回、夢を忘れる度になにか掛け替えのないものが欠落した絶望を覚えます。  太陽の白い光が悲しい。  青くなった空が寂しい。  大きな入道雲が切ない。  とにかく、胸が苦しくなる。だからこそ私は、風邪をひかないようにタオルケットを自身にかけて、もう一度だけ意識を遠くへ飛ばそうと試みます。流れ落ちた夢が、きっと目を瞑った暗闇の先にあるはずだと信じて。
/342ページ

最初のコメントを投稿しよう!