第2章 手繰り寄せる記憶

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 忽然といなくなった女子生徒、仲間 実比奈。手がかりは鍵のかかったスマホくらいなもので、失踪から約一週間という時点から彼女を見つけだすのは困難を極めている。  親が、警察がただの家出だと判断して動かない以上、仲間さんの安否を本気で心配しているのはナナだけだ。もしも、仲間さんが危険な状態だったら? 手遅れだったら? 不安で仕方がない彼女の気持ちは、分からないでもない。僕も、結末を知る覚悟ができたからにはすぐ探しに出かけたい。  しかし、三日間だ。ナナは今日、僕と会うまで仲間さんを探し歩いていた。彼女に繋がる伝手を求めて、奔走した。陰陽師なら、式神をたくさん召喚すれば人海戦術ができるじゃないかと思ったが、今のナナにはできないらしい。曰く、『妖力を全て吸われて死んでしまう』とのことだ。陰陽師の力が使えず、たった一人で頑張っていたナナの表情には明らかな疲労が伺えた。  だから、怱々町での捜索は明日にして、今日はいったん帰宅しようと提案した。やはりといった具合にナナは最初こそ拒否したものの、明日への準備と休息を兼ねての意味だと伝えると、ため息を吐いて了承した。
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