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そうして、僕らはランチとドリンクバーを割り勘してファミレスで別れた。帰りの電車に揺られながら、僕は車窓をぼんやり眺めている。実は、道すがら仲間さんが立っているんじゃないかと、いつもより外を注視してしまう。だけど目で追うにはあまりにも、電車の速度は速かった。市街地から田舎町へ。移り変わる景色は一瞬の躊躇すら待ってくれない。
止まっていた時間が動き出した。光のない結末に向かって、止まることなく走るのだ。
★☆★☆
次の日。
自宅の最寄り駅である『怱々間口』駅。在って無いような改札を通れば、日に焼けたポスターが目立つ寂れた待合室がある。
その、色あせたプラスチック製の固い椅子に僕は腰かけていた。常駐する駅員などおらず、窓口にかかるカーテンはずっと前から閉まったままだ。
自販機で買ったお茶は量が減ると共にすっかりぬるくなってしまっていて。広めの手すりに置くと、腕時計で時間を確かめた。
九時四十四分。もう少しで来るはずだ。
残りのお茶を飲み干すと、自販機の隣にあるごみ箱へ捨てようと立ち上がった。コンクリートの地面に、緑色のパッケージがぼうっと浮かび上がる。今日も日差しが強い。
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