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「顔を上げろ、常盤真結」
条件反射で真結は顔を上げる。変わらず真っ直ぐな視線でこちらを見つめる空に、ドクンと心臓が高鳴った。
「怖がるな。……大丈夫だから」
後半の言葉は囁くような小声で、海や幸成には聞こえなかっただろう。おそらくこれは、真結にだけ聞かせたかった言葉だ。
空の表情を見て、真結はゆっくりと大きく頷いた。不思議なほど、心が穏やかになっている。
「ありがとうございます、海さん。お兄ちゃんと……話します」
真結の言葉に海は満足そうに頷くと、幸成に座るようにと勧める。陸と空は立ち上がり、ドアの方へ向かった。
空以外の皆は、真結と幸成の二人きりで話をするのだと思っている。しかし、ルイとロゼは真結を挟むように座ったままで、真結の腕をしっかりと掴んでいた。
ルイとロゼが側にいることで、どれほど心強いか。それがわかるのか、二人が休憩室に残るのを見ても、空は何も言わず、何もしようとしなかった。
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