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「そうか……。このことは、お前が成人した時に打ち明けるって決めてたんだよ。千勢にもその話はしていたのに、あいつ言ったんだな。……本当にごめん、真結」
「お兄ちゃんのせいじゃないよ。お兄ちゃん……私のこと、大事にしてほしいって千勢さんに言ってくれてたんでしょ? 千勢さんはそれを違った意味で誤解しちゃったんだと思う。千勢さんはお兄ちゃんと結婚したかった。私はその障害になると思ったんだよ」
千勢は千勢なりに必死だったのだと、今ならそう思える。ただ、他に好きな男性がいるようだったのに、それでも幸成と結婚しようとしたことには疑問が残る。
「……千勢さんは、どうしてお兄ちゃんと結婚したかったんだろう」
ポツンと呟くと、幸成は自嘲するように小さく笑った。
「俺のバックグラウンドが魅力だったみたいだよ」
「バックグラウンド?」
幸成は、一流商社に勤めている。大きい会社に勤めていて、真面目、性格も温和で多少の我儘は許してもらえる。両親も穏やかで、面倒がなさそう。千勢は幸成本人よりも、そういったバックグラウンドを重要視していたのだという。
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