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完全に先輩はどこかへ行ってしまったようだ。今、萌の心を占めているのは陸らしい。
真結は呆れながらも、クスッと笑ってしまう。
気が多いというか、移り気というか、それでも一向に気にせず自分の気持ちを口にする萌はいっそ清々しい。
こういう萌の裏表のないところが真結は好きだった。
「常盤さん、日誌書けた?」
気付くと、一人の少年が真結と萌が話しているすぐ側に立っていた。
真結とその少年は、今日日直だったのだ。
「あ、ごめん! うん、書けてるんだけど、私が職員室に持っていくからいいよ」
「じゃあ、頼む。僕、今日は部活があるから」
「わかった。部活、頑張ってね」
日直の相方を送り出し、真結は日誌を持って立ち上がる。
「私、職員室に寄ってから帰るから、今日は先に帰ってて」
「うん、わかった。じゃあ、明日ね!」
「うん、また明日!」
萌は自分の鞄をよいしょと肩にかけ、真結に手を振りながら教室を出て行く。
真結も追うように、一年五組の教室を後にした。
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