(1)ココロノオクソコ

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 ***  「Milestone」に到着すると、すぐさま陸が二人を見つけ、笑顔でやって来る。 「こんにちは、真結ちゃん。また会えたね」 「こんにちは」  この間は一瞬怖いと思ってしまったせいで躊躇したが、今度は差し出された手をそっと握った。 「よかった、また拒否られたらどうしようかと思った!」 「すみません……。この間はビックリしちゃって」 「そうだよね。僕もちょっと驚いてさ、警戒しちゃったんだ。ごめんね」 「いえ」  これまで見えなかったものが見えたのだ。陸だって驚いたに違いない。 「陸、今日はオーダーメイドの予約が入ってるんだろ?」  空が言うと、陸は「うん」と頷いた。 「女子高生。恋愛か勉強か、そんな感じかなとは思ってるんだけど」 「でも、オーダーメイドだろ? 結構な金額なのに、恋愛だの勉強だのにそんなにお金をかけるか?」 「かけるよ。本当に切実に願っているなら、金額なんて関係ない。ね、真結ちゃんもそう思うでしょ?」  陸に聞かれ、真結はコクリと首を縦に振る。  他人からすれば何ということもない願いであったとしても、本人が切羽詰まっていればどんなことにもすがりたくなるだろう。  多少値が張っても、それで叶うのであれば、そう信じられるのだとすれば、お金をかける価値はあると思う。
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