(1)ココロノオクソコ

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「彼女の姉は、彼女にとって完璧みたいだな。……でも、完璧なんてありえないのに」 「……由梨さんは、両親から愛されてないのかな?」  由梨はひたすら両親からの愛を求めていた。  いつも姉と比べられ、何もかも姉には敵わない自分を嫌っている。愛されないのは、自分が不出来だから。  綺麗で優しくて勉強もスポーツもでき、いつもたくさんの人に囲まれ、幸せそうに微笑んでいる姉。  見た目や性格は今更どうにもならない。ならせめて、勉強だけでも姉より優秀でいたい。そうすれば、少しは自分の方も見てもらえるのではないか。  痛くなるほどの必死な願い、由梨の心の叫びがずっと聞こえ続けている。  真結は切なくなり、ぎゅっと目を閉じた。 「きつい?」  空を見ると、淡々とした表情の中に僅かばかりの優しさが見えた。  気遣ってくれている、そう思った時、心が少し軽くなった。
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