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「……青柳君は、いつもこんな思いと向き合ってるんだね」
空は意識して能力をオフにしていないと、常に人の潜在意識が流れ込んでくる。
今はあえてオンにしているが、いくらバイトとはいえ、怖くならないのだろうか。
真結は怖いと思う。
顕在意識ではセーブできることが、潜在意識ではそうはいかない。人によって深い闇を抱えていたり、残虐なまでの攻撃性を秘めていたりする。そういったものに飲み込まれてしまいそうな恐怖がある。
「こんなことくらいでしか、役に立たない能力だから」
「……」
空の瞳に影が宿る。それを見て、真結はきゅっと胸が苦しくなった。
真結は自分の能力を役に立たないものだと思っている。
人の特殊能力を増幅する、それに一体何の意味があるというのだろうか。
こういった能力だから、普段の生活には何の支障もない。こんな能力だから、一生気付かなくてもおかしくはなかった。
それなのに、気付いてしまった。気付いたのに、どう使えばいいのかわからない。
空は自分の能力を役立てている。素直にすごいことだと思った。
紆余曲折はあっただろうが、空は自分の能力を受け入れ、それを活かしているのだ。
それなのに、自分は──。
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