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「いつもはこんなにはっきりとは聞こえない」
空がおもむろにそう言った。真結は空の顔を見上げる。
空が次に何を言うのかをじっと待っていると、空は真結と視線を合わせ、ほんの少しだけ表情を和らげた。
「いつもはもう少し意識を集中させる。そうしないと色々な感情と混ざるから。でも今日はそこまで集中しなくても、潜在意識の声だけがはっきりと読み取れた」
「……」
そして、素っ気なくフイと横を向く。
「常盤真結、君の能力があるからだろ?」
「……それ、役に立ってるの?」
真結の増幅能力があったから、いつもよりはっきりと聞こえた。しかし、真結がいなかったとしても空には読み取れたはずで、それでも役に立っているといえるのか。
「俺が楽できる。役に立ってるんじゃない?」
「……」
相変わらず言い方はすげないが、真結の心がじんわりと温かくなった。笑みが零れてくる。
自分の能力について、こんな風に言ってもらえるのは初めてのことだった。
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