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店に到着すると、一人の青年がやって来て、二人に小声で伝える。
「例のお客さん、もう来てるよ。陸さんが対応してるんで、よろしく」
「わかりました」
空は頷くと、すぐにスタッフルームへ足を向けた。真結も青年に挨拶して後を追う。
「今のって?」
「バイトの宇野大輝さん。陸の高校時代の後輩で、その時から店を手伝ってくれてるらしい」
「そうなんだ」
陸は主に客の相手をすることが多いことから、会計やら店の細々したことは彼に任せているようだ。
大輝は小柄で愛想がよく、男性にも拘わらず可愛らしい雰囲気を持っていて、感じのいい人だなと真結は思った。
二人は休憩室に入り、空がマイクを装着する。イヤホンの方は外部端子で小型スピーカーに繋ぐ。この間もこうやって二人で話を聞いていた。
真結は空の向かいに腰掛け、緊張した面持ちで意識を集中させる。今日は潜在意識を読む必要はないのだが、何かしらの助けになればいいという思いからそうせずにいられなかった。
空はチラリと真結を見遣り、小さく息を吐く。
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