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「君が気にすることはない」
「そうなんだけど……。でも、何が不満だったのかなって」
あの日、由梨は納得していたように見えた。店に来た時より明るい顔になって帰っていったのだ。
オーダーしたブレスレットの効果がないというクレームならまだわかるのだが、まだ出来上がってもいないのに。
スピーカーからは、相手をリラックスさせるような陸の優しい声だけが聞こえてくる。
由梨はクレームがあると言って店に来たはずだが、先ほどからずっと黙ったままだ。緊張しているのか、言い出しづらいことなのか。そんな由梨の心を解きほぐそうと、陸が奮闘しているのがよく伝わってきた。
『レッドスピネル……』
やっと由梨の声が聞こえ、真結は身体を固くする。空を見ると、眼差しが鋭くなっていた。
『成績アップ、志望大学合格っていう目標達成を助けてくれる鉱石だと説明しましたよね』
『……はい』
『そして、里中さんもとても気に入ってくれたと思ったんですが……』
『はい、あの時は』
では、今は気に入らないというのだろうか。
真結の考えを裏付けるように、由梨が思い切った口調で後を続けた。
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