番外編-2

6/6
前へ
/14ページ
次へ
「悪いねぇ」   バーバラは袋を奪い取った。 「なんだい、アンタそんな身なりしときながら、これだけしか持ってないのかい? まあ、いいさ」   ぶつくさと文句を言いながら、バーバラは袋をスカートの間に挟んだ。 さすがにげんなりとしながらも、ノエルは話を切り出した。 「あの、ハミルトンの話ですけれど。続きを聞かせてください」 「やだね。アンタまだあいつと関わる気かい? いい加減にしないと、殺されちまうよ」 「構いません。奴を独房にぶちこめるのであれば、僕は死んだって構わない」   ノエルは寝具を脱ぎ去り、ベッドの端に腰かけた。 じっとノエルの顔を見ていたバーバラは「仕方ないね」と呟くと、ノエルへ手を伸ばした。 「そんじゃあ、ここからは別料金になるが、構わないね」   バーバラの手が、迷うことなくノエルの腰にかかった懐中時計を掴んだ。 (オデットを助けるんだ……誰でもない、僕が愛しい彼女を!) 激しい情熱が渦巻く胸をおさえ、ノエルはぼんやりと揺らぐオイルランプの炎を見つめた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加