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「悪いねぇ」
バーバラは袋を奪い取った。
「なんだい、アンタそんな身なりしときながら、これだけしか持ってないのかい? まあ、いいさ」
ぶつくさと文句を言いながら、バーバラは袋をスカートの間に挟んだ。
さすがにげんなりとしながらも、ノエルは話を切り出した。
「あの、ハミルトンの話ですけれど。続きを聞かせてください」
「やだね。アンタまだあいつと関わる気かい? いい加減にしないと、殺されちまうよ」
「構いません。奴を独房にぶちこめるのであれば、僕は死んだって構わない」
ノエルは寝具を脱ぎ去り、ベッドの端に腰かけた。
じっとノエルの顔を見ていたバーバラは「仕方ないね」と呟くと、ノエルへ手を伸ばした。
「そんじゃあ、ここからは別料金になるが、構わないね」
バーバラの手が、迷うことなくノエルの腰にかかった懐中時計を掴んだ。
(オデットを助けるんだ……誰でもない、僕が愛しい彼女を!)
激しい情熱が渦巻く胸をおさえ、ノエルはぼんやりと揺らぐオイルランプの炎を見つめた。
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