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(愛しい、オデット。いつまでも君は、僕のすべてだった。きっと、君に会えなくなったせいで、僕は愛を止めるすべを忘れてしまったんだ)
相変わらず砂糖菓子のように微笑むオデットを、ノエルはぼんやり見つめた。
――私のためにここまで来てくれたのでしょう? 早く起きて、あいつを止めて。
オデットはそう言うと、涙を一粒こぼした。
(泣かないで、オデット)
涙をふくために、ノエルは手を伸ばした。
だが、その手が伸びると同時にオデットの姿は白い光となり消えて行った。
「待って、オデット! 僕は……って、うぎゃああ!」
勢いよく起き上がったノエルは、目の前に迫った女性の顔に悲鳴を上げた。
「人の顔を見て悲鳴を上げるなんて、失礼な男だね」
そこにいたのは、バーバラだった。
その手には、なぜかノエルが腰につけていた金の懐中時計を握っている。
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