37人が本棚に入れています
本棚に追加
ノエルは先日訪れたパブの前で、深呼吸した。
「よし……!」
気合を入れて扉を開けた瞬間、むせ返る酒の匂いに気絶しそうになる。
警察たちが厳重体制で見回りをしているというのに、パブは酒を飲む人たちであふれかえっていた。
煙草と質の悪いアルコールと、安っぽい香水の匂いの入り乱れる中に足を踏み入れる。
重なりあうように押し合う男女の波にもまれながら、やっとカウンターにたどり着いた。
(し、死ぬかと思った。……ルイス君はあんなに簡単に歩いていたのに)
そこまで考えると、ノエルは思い切り頭を振った。
「ルイス君はルイス君だ。あの人はもう、関係ない」
自分にそう言い聞かせて呟いた。
気合を入れなおして、顔をあげる。
とたんに女性の顔が目の前に迫り、体がのけ反った。
最初のコメントを投稿しよう!