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「アンタ、また性懲りもなく来たのかい?」
どうやら、先日此処を訪れた時にノエルたちを見ていたらしい。
恰幅のいい女性は、気だるげにカウンターに寄りかかってきた。
この前に話した女性とは違い、目じりに皺のある中年の女性だ。
「あ、あの、この前の女性は……」
「アンタ、ボニーに会いに来たのかい。だったら、残念だったね。今日は休みだよ。どうせ、ウエストエンドで客を待ってるんだろうさ。アタシはバーバラってんだけど、ここの女将とは昔馴染みでね。うちの店は今ちょうど酒を切らしていて店を開けないんだよ。その代わりに、ここで働かせてもらっているってわけさ」
癖の強い赤毛を指先でいじりながら、バーバラは言った。
「それで、何か飲んでいくのかい?」
「えっと、お酒はちょっと……」
「なんだい、用がないならさっさと帰りな」
急に冷たい声を出したバーバラは、背を向けた。
ルイスはカウンターに身を乗り出して、彼女を引き留める。
「用はあります! あの、ハミルトンという男について聞かせてください」
最後は声を少し落として言った。
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