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「……いいよ。喜んで。ただし、その代わりに何を渡せばいいかは分かっているね?」
振り返ったバーバラは、ノエルに手を差し出した。
ノエルはその意図に気づき、上着をパタパタと叩いた。
小分けしたお金の内、内ポケットに入れていた袋を取り出す。
一シリング硬貨を摘まむと、バーバラの手に握らせた。
「まずまずってところだね。いいだろう。なんでも聞いとくれ」
カウンターの向こうで椅子に座ったバーバラは、薄ら笑う。
不気味な笑みに、ノエルは空唾をのんだ。
「ここで働いていた、オデット・ディノワールとハミルトンはどういう関係だったんですか?」
「オデットねぇ……。ああ、この前自殺したっていう子だね。どういう関係って、ただの客と女給の関係だよ。まあ、あの男はしつこくオデットに付きまとっていたみたいだけどね」
「それじゃあ先月の十五日頃、何かハミルトンに変わった様子はありませんでしたか?」
「先月の十五日――そんな前の事なんて覚えてないねぇ……」
腕を組んで考え込んだバーバラが言うと、ノエルは肩を落とした。
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