37人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんだ、まだ俺のことを嗅ぎまわってんのか? どうなんだ、ん?」
「そうですよ。貴方のことが知りたくて、ここに来ました。僕はまだ貴方のことを疑っています」
「ちょっと、アンタッ……!」
バーバラに腕を掴まれるが、ノエルはそれを振り切りハミルトンに近づいた。
「照れるねぇ。よっぽどお坊ちゃんは俺のことが好きみたいだ。オデットもよくそうやって、俺を困らせては俺の気を引こうとしてたんだよ。あの女、子供ができたなんて嘘までついてな。愛人にそのことを知られて喧嘩したみたいだが。あのままじゃあ、どのみち愛想を尽かされるのも時間の問題だったな」
「オデットが貴方の気を引こうとしただと? 勘違いもそこまでいくと、尊敬に値しますよ。今日はあの医者はいないのですか? どうやら、貴方は熱に浮かされて妄言を吐いているみたいだ。すぐに帰って、医者に診てもらった方がいいですよ」
ノエルはハミルトンの挑発めいた言葉に、ぐっと怒りを堪える。
(ここで挑発に乗ったら駄目だ。僕もルイス君みたいにできるはずだ。……僕だって)
震えそうな唇を横にひいて、無理やり笑ってみせる。
それを見たハミルトンは、一瞬口を歪めたが笑い声をあげた。
最初のコメントを投稿しよう!