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「威勢がいいねぇ。そんなに俺のことが知りたきゃ、飲み比べでもしようぜ。それに勝ったら、何でも話してやる」
カウンターに置かれたのは、ジンのボトルだった。
それを、ハミルトンは何本もノエルの前に並べていく。
「どうだ? 悪い話じゃないだろう? いい暇つぶしにもなるし、お前も大好きな俺の情報を聞ける」
「お断りします」
ノエルは敢然と言い放つ。
本当は、心臓が飛び出しそうなほどに鼓動が脈打っていた。
それでも、オデットの顔を思い浮かべてハミルトンと対峙した。
「なんだと? 俺の酒が飲めないって言うのか」
「ええそうです。……というか、お酒は一滴も飲めません。あ、でもワインなら死ぬ気でグラス一杯だけなら飲めます。貴方の用意した安酒なんて、飲めないと言っているんです」
ノエルはルイスのように、鼻先で笑ってみせる。
「そうやって、田舎貴族を見下して自尊心を満たそうとするなんて、英国の王室もたいしたことありませんね。いや、貴方が特別なだけですか? 王室から見放された、道楽息子さん」
余裕の表情を取り繕い、皮肉な言葉を吐きだした。
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