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「わたくしの〈柔包言〉の前では、どんな凶器も柔らかな玩具になりましてよ」
続けての連続三投も、全て弾かれた。
──厄介だな。
スズリは、腕時計型装置に手を伸ばす。
▽
「こいつら、鬱陶しい!」
幾つもの白いエネルギー球を躱すミコトは思わずそう呟いた。
球はミコトを追尾する。避けても、撃ち落としても、ミコトにめり込むまで追尾をやめない。
「俺の〈言葉のキャッチボール〉は、相手に届くまで飛び続けます!」
綺麗なフォームでエネルギー球を投げ続ける四谷。
「ああ、そう!でもキャッチボールってことは、キャッチしてしまえばそれまでだよね!?」
一球をキャッチ。そして投げ返した。
するとその球だけは、ミコトではなく、四谷を追尾し始める。
「見事!しかし解除してしまえばそれだけ」
四谷に届く前に、その球は消えてしまった。
「全てをキャッチすることが、できますか!?」
ミコトの身体に、数十のエネルギー球が突き刺さる。骨の軋む感覚と、それらを『劇的な嘘』に変える虚構の力を感じながら、ミコトは地面に転がった。
息つく暇もなく、地に伏したミコトの上から降り注ぐエネルギー球。
──これは、何回死ぬかな。
攻撃は止まない。
▽
「......ステラ」
二階堂エンは、金属でできた枝の様なものに四肢を拘束されたナタリアに言う。
「くっ......これは?」
「それ、オラの能力だべや。〈言葉訛り〉。液体、個体の鉛を操づれる」
独特のイントネーション、濁点の多い言葉で話す彼女のそれは、どこかの方言だろうか。
「ステラ、覚えでねぇ?オラ、二階堂エンなや」
そう問うてきた彼女に、ナタリアは過去の記憶を辿り、すぐに答えに至った。
「エン!?あのエン!?」
驚き叫んだナタリアに、二階堂は安心した様に笑った。
▽
「あら、ゼロ化すれば勝てると思いまして?」
肩で息をするスズリの前で、三ノ宮は高らかに笑う。
「ゼロで無効化できなかった、だと!?」
驚愕。手元の黒ナイフ──オブラートに包まれた──見る。
「不思議そうですわね。教えてさしあげますわ。ゼロ化が能力を無効化できるのは、能力に込められた言霊を虚構世界へ送るから。私の能力を無効化できなかったのは、私の言霊放出量が、送る速度を超えていたからでしてよ」
「虚構世界へ送る量を超えた......!?そんな放出量、一体どうやって」
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