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「簡単でしてよ。これを使えばいいの」
そう言って取り出した、緑色の液体が入った注射器。
先程四人が打っていたものだ。
「リーダー。あ、あの少年じゃなくてガスマスクの方ね?以外は、言うなれば『キャスターのなり損ない』ですの。キャスターになれるほど貯蔵力も放出力も多くない」
注射器を二の腕に刺す真似をして、彼女は続ける。
「けれどもコレ、〈言霊濃縮剤〉を使えば本物のキャスターをも超えた力を手にすることができますの」
ウットリした顔で、注射器を見る。その姿にスズリは少し恐怖を覚えた。
「あぁ。一日一本までと言われていましたけど、二本目いってもいいかしら」
と、本当に二の腕に刺そうとする彼女に、スズリのナイフが奔る。
「おっと、もぉ。邪魔しないでくださる?手元が狂ってしまうでは──」
「──やめとけ。『強くなる薬』なんてあるわけないだろう」
「......ふん。能力者様は簡単に実力を抜かされるのがお嫌いかしら」
ムスッと返した三ノ宮から流れ出す『第九』。彼女は携帯を取り出し、電話を始めた。
「電話......!?言語世界で!?」
再び驚愕するスズリ。
電話を切った三ノ宮は言う。
「あなたのお仲間をとりあえず一人捕まえたので、今日のところは帰りますわ。薬の効果も切れ始めますし」
「捕まえた!?誰をだ!」
「あの子ですわ。あの、白い外国人の子」
「ナタリア......!」
ナタリアの能力はサポート向け。一対一では扱いづらい能力である。そして脱出しようにも、彼女はゼロ化できない。
「それではまた会いましょう、確か、刀道スズリさん?」
背を向けて去っていく三ノ宮。
それを放って、ナタリアがいるであろう方向へと走り出した。
▽
「まったく。戦闘中に電話をするなとあれほど......」
そう呟いたガスマスクの少女。
「というわけです。今日のところは失礼します」
深くお辞儀した彼女に、オレは炎を纏った踵落としを撃つ。
手加減などしない。ナタリアが拐われてしまう。
しかし、また攻撃は逸れた。
空を斬る踵。勢い止まらず回転。しかしその勢いを次の攻撃に乗せる。
両手の指を絡め、ハンマーの様に叩きつける。
同時放出する炎が彼女を襲うが、全て逸れた。
彼女は、紙で作られた指先サイズの立方体を三つ、宙の俺に投げた。
──避けられない!
至近距離で炸裂した爆弾に吹き飛ばされ、廃ビルの壁に衝突する。
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