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椅子に座ると、前の席に“猫”も座った。 そう言えばこの“猫”、なんて名前なんだろう。 いや、そもそも名前あるんだろうか。 「ないよ。」 「え。」 急に前から声が聞こえて、顔を上げる。 と、“猫”と目が合った。 “猫”は頬杖をついて、ニコニコと笑っている。 そして、鼻歌まで歌い出した。 まったく、呑気だなあ・・・。 って、そんなことより! 「ないって、名前のこと?」 「うん。僕、野良だったし。」 驚いた?なんて言いながら、首を傾げる。 ・・・確かに驚いた。でも、それは名前がないことにじゃない。 私が驚いたのは、それとは別のことについてだ。 「なんで私が考えてたことがわかったの?」 「・・・・・・。」 聞きたいのはそれだけじゃない。 「そもそも、一体何者なの?」 “猫”は俯いて暫く黙った後、静かに答えた。 「それは僕の口からは言えないよ。」 ・・・・・・は? 「それってどういうこと?」 じゃあ誰に聞けばいいの? 「心配しなくても、そのうちわかるよ。」 そのうちっていつ? そう聞こうとする前に、“猫”が先に口を開いた。 「それよりあきにゃん!僕に名前を付けてよ!」 それよりって・・・。結構重要なことだったと思うんだけど。 完全に話をそらされた。 まあ、そのうちわかるって言ってたし、それまで待つか。
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