義父むす

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「父さん、頑張れ! 行けぇ!」  母親似でクールな彼の絶叫に、俺は耳を疑った。あの時は夢中で気づかなかった。彼の声援にも、初めて「父さん」と呼んでくれたことにも。  俺が倒れ込んだ瞬間も、「父さん!」と叫びながら飛び出す彼の後ろ姿が映っていた。  たった3年でも、かっこ悪い最後でも「父さん」と呼んでくれた。  それは最高の賞品だった――。  退院の日、慣れない松葉杖をつきながら病院を出ると、彼が待っていた。  驚く俺に照れ隠しか、バッグを乱暴に奪い取り、そっぽを向いたまま言う。 「これぐらい、持つよ。一等賞だったんだし」 「……ありがとう」  運動会の日も、今までも――万感の思いを込めてそう言うと、彼は振り返って笑った。 「中学の体育祭も体育の日にやるんだってさ。保護者リレーはないけど、観に来てよ――父さん」  いいのか、と聞くまでもない。  俺は頭がもげそうな勢いで何度も頷いた。(終)
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