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「今年の花火大会は北斗くんを誘ってみようと思うの」
それは放課後。
忘れ物を取りに教室に足を踏み入れ様とした瞬間だった。
「その時に誕生日プレゼント渡して、告白しようかなって」
告白──?
ゴンっと後ろから頭を殴られた感じがした。
そうだ。
オレたちはいつまでも一緒に居られない。
いつか…オレよりも大事に思える彼女ができる。
どんなに北斗がオレに優しく、優先してくれていても、いつかは離れなくてはならない日が来る。
その年の花火からだ──
花火を見ながら…あと何年一緒に見ることができるんだろうか…と思い出したのは。
中学時代はとにかくドキドキと不安を抱えていたように覚えている。
高校に入ると…更に体格差が顕著になった。
入っていたバスケ部も県大会出場したりと活躍した北斗は毎日のように告白されていた。
「また呼び出し」…面倒くさそうに頭を掻きながら待ち合わせ場所に行く姿に…今日は大丈夫だろうか…とますます不安になった。
そして苦虫を噛み潰したような顔で断ったと聞く度にホッと胸を撫で下ろしていたなんて…北斗は気づいていないだろう。
だけど、これからはどうなる?
このままそばにいて、北斗に彼女が出来るのをただじっと見てるのか?
そんなの…無理に決まってる。
そうして迎えた大学受験。
同じ大学に行くはずだったオレたち。
嘘をついて…家から遠い違う大学を受けた。
北斗がオレのせいでランクを落としているから大学を変えたことを伝えないでくれと頼んだ。
先生や家族は首をかしげてはいたが、結局はオレの意見を尊重してくれた。
しかしながら元々勘が鋭い北斗。
引越しが済むまで気を抜けなかった。
卒業式の日──。
「卒業式が終わったら話があるんだけど」
朝早くにわざわざ迎えに来てくれた北斗に分かったと笑い、卒業式が終わると北斗に気づかれないように急いで家に帰って、そのままその足で地方にある新居へと赴いた。
北斗と一言も話をしないまま──。
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