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突然だが、私は魔法少女だ。
数日前、悪の組織との戦いを終え、私と仲間達は魔法少女としての役目を終えた。
この世界に存在する悪は、全て滅んだのだ──
そう、悪は滅んだ。
──それで、良かった筈だった。
ある時、私達はとある場所に呼び出された。
同じ魔法少女であった、青髪の女の子に。
彼女は私達のリーダー的な存在で、彼女からの呼び出しとあれば行かない理由は無い。
呼び出されたのは、人気の無い路地裏。
町の方にも人通りは少なく、此処ならば部外者に話は聞かれないだろう。
少しだけ気になる事があるとすれば、青髪の彼女はずっと俯いている事。
「それで、いきなりどうしたのよ?こんな処に呼び出して。」
仲間の1人である、金髪の少女がそう言った。
すると、青髪の彼女は俯いたまま口を開く。
「・・・ねえ。あのさ、悪は滅んだんだよね?この世界に、悪はもう存在しないんだよね?」
いつもより低く、震えた声でそう話す。
それを聞いた瞬間金髪の少女は目を丸くし、私も少し身じろいでしまった。
「・・・そう、ですよ。悪は滅んだのです。」
「貴方、一体どうしたの?さっきから様子が・・・」
金髪の少女が言い終わらない内に、また青髪の彼女は口を開く。
「・・・耐えられない。耐えられないの。ずっと、ずっと考えてた。考えてたら、耐えられなくなったの。」
青髪の彼女は、先程と同じ低い震えた声でそう告げる。
「い、一体何を・・・」
「悪が居なくなった以上、私達の役目はもう終わったの。正義は・・・善は悪が居ないと存在出来ないの。悪が滅んだ以上、私達はもう善ではいられない。ねえ、次に悪が現れたら誰が善になるの?私達が善でいられないなら、誰が世界を守るの?」
彼女の発した言葉は、支離滅裂なようで、理に適っているような・・・
少なくとも、今の私には理解出来なかった。
「私達は善でいたいの。けど悪が居ないと善は存在出来ないから、私達は善ではいられない。・・・ああ、でも、今話していて思い付いたわ。私は駄目だけど、貴方達が善でいられる丁度いい方法を!」
青髪の彼女は、ゆっくりと顔を上げる。
その顔は、いつもの微笑みではなく。
狂気に染まった、まるであの時に倒した悪の組織のような、そんな笑みだった。
「私が悪になればいいんだわ!」
次の瞬間、私の視界は暗転した。
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