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彼は私の友達のことをほとんど知らない。
いや……覚えようともしないのだ。
誰と出掛けようが気にならないよ、そう言われているようで結婚してすぐの頃はいつも寂しかった。
そのうちそんな思いをするのも嫌になり、翔が産まれてからは友人と出掛けることも少なくなった。
そういう私だって夫の交遊関係はほとんど知らない。むしろ気にしないふりをしている。
私だけが寂しい思いをするのは癪にさわるから。
私達は夫婦という関係で繋がっているだけで、何年経っても家族にはなれていないような気がしている。
普通はだんだん妻として扱われなくなって、家族になっていくのが寂しいって聞くもんだけどね……
細い、細い糸のような夫婦という繋がり。
何かのきっかけがあればあっという間に切れてしまいそうな不安定な繋がりだ。
「翔はどうするんだ?」
ぼんやりしていると、修吾が聞いてきた。
「芽依のとこに預ける。次の日土曜日だから泊まって来るね」
『あなただって、行きたい所があるから都合がいいんじゃないの?』
その言葉は、喉に引っ掛かって出てこなかった。
「結婚式の時は酔ってそのまま別れちゃったから、二人とあんまり話してないの。ごめんね」
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