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亨に対して、丁寧だけど無表情で淡々と話していた裕介くんだったけど、こっちを向いた途端に優しい口調に変わった。
「……香織?そうだよね?」
間近で向けられた視線は優しく、同意を求めるその口調はまるで恋人に向けるような甘さも含んでいた。
「えっ?……あっ、……う、うん」
ようやく返事を返したけど、甘い視線といつもの『香織ちゃん』ではなく恋人のように『香織』と呼ばれて、恥ずかしさに頬がポーッと火照っていくのを抑える事が出来なかった。
「……ったく、どいつもこいつも気安く名前呼びやがって……。おい、香織。コイツは誰なんだよ?ここのウェイターか?お前、何でこんなヤツと一緒に部屋にいたんだよ!」
「あーあ……陽介さんのコーヒーすっかり冷めちゃったね。ギャンギャン喚いてる男女がいるから暑苦しいかと思って、冷たいの頼んでおいたよ」
明らかに敵意を向けて来た亨には目もくれず、裕介くんはカウンターの方へと進み、アイスコーヒーを持ってきて私の目の前に置いた。
「ほら、まずこれ飲んで。息整えて。言いたい事、ちゃんと言ってやりなよ。……本当はね、このまま見守ろうと思ってたんだけど、二人揃ってあんまり勝手な事を言ってるから、我慢できなくなったんだ。ごめんね」
ポンポンと背中を撫でられる。
促されるままアイスコーヒーを一口ごくん、と口にすると、不思議と気持ちが落ち着いた。
さっきまであんなに勢い良く話していた彼女の方は、何故か裕介くんを凝視したままで固まっていた。
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