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「香織ちゃんの恋は終わったんだよ。安心して気持ちを解放したらいい」
そうだ。私、ちゃんと恋をしていたんだ。
幸せだった二年間。
確かに私は亨に恋をしていて、私にとって彼はいちばん愛しい存在だった。
「終わったか終わらないか分かんないから、諦めもつかなくて、ずっと辛かったよね」
裕介くんの言葉に、両目から堰を切ったように涙が溢れて頬を伝っていった。
再び恋をすることができて、恋をしていた事に気がつくことができて嬉しい。
……でも、結局また私は恋を失ってしまった。
私は嗚咽をもらして泣くこともできずに、裕介くんを見つめたまま静かに涙だけを流し続けた。
裕介くんは何も言わなかった。
ただ、時折小さな子どもをあやすように、トントンと背中を叩いてくれた。
やがて涙が止まりかけた頃、背中を叩いていた両手が私の頬を包み、指が涙を拭うように横に滑っていった。
耳の後ろに添えられた手が、少しだけ私の顎を持ち上げた瞬間には、唇に温かくて柔らかな感触を感じていた。
あまりにも自然な仕草で、目を閉じる間も無かった。
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