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跪いて花束を渡した彼。
涙ぐんで受け取った『彼女』。
一斉に「おめでとう!!」と二人を取り囲んで声をかける同級生達。
歓喜の輪の中でしあわせに笑み崩れる二人。
……まるでドラマみたいなプロポーズだった。
そんな『彼氏』の姿を……
『彼女』だったはずの私は口を開けて呆然と見ていることしかできなかった。
ここで〈答え〉。
酔いが回ったからと逃げるように同窓会を抜け出し、家に着くなり缶ビールを引っかけつつ、化粧も落とさずそのまま眠りましたとさ。
……そう。私は何もせずにただその場から逃げたのだ。
日曜日は何をする気力も無くして、彼と過ごした日々をただひたすら思い返していた。
一通りの想い出と感情を、身体に通過させた後で最後に湧いてきたものは、涙なんかじゃなくて、諦めにも似た乾いた笑いだけだった。
アハハ。
もう声すら出ない。
どうやら私は全ての記憶と一緒に、愛情も流してしまったらしい。
こうして……
私、崎山 香織28歳の、ほぼ二年のお付き合いは呆気なく幕を閉じたのだ。
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