未来をともにする人

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「それからは誰とも付き合うこともできなくて、ただひたすら2人から離れることだけを考えた。大学だって側じゃなかったらどこでも良かったんだよ」 「それでもさ、勝手かもしれないけど好きだって言って慕ってくれる奈緒を、大切な友達だって言ってくれる純を、俺はずっと手放せなかった。……奈緒には何度も伸ばしてくれた手を取って、気持ちに応えてやろうかと思った」 「だけど、それは好きだからじゃなくて、寂しい時や心細い時に、家族のように側にいてほしかっただけだったんだ……そんな俺の気持ちが2人の気持ちを邪魔をしていたのなら、やっぱり俺のせいだよな」 ほんとに、ごめん。と奏ちゃんは私に頭を下げた。 私は一言だけ聞いた。 「……奏ちゃん、今しあわせ?」 奏ちゃんは迷うことなくこう言いきった。 「しあわせだよ」 「志帆がはじめてなんだ。自分のこの手でしあわせにしたいと思ったのも、ずっと寄り添っていたいと思うのも」 そう言って微笑んだ顔は、今まで見たどの顔よりも幸せそうで、輝いて見えた。
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