火竜退治

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火竜退治

 今回は、ちょっと早かったかもしれない  でも結局は、いつものパターンだった。  ● 「グギィオオオオオオオオオオ!!」  火竜が、赤い全身を『ぎっ』と(こご)らせた。漏れ出た魔力の余波が、彼の棲家である谷底にヒビをはしらせていく。小型とはいえ、四大古龍の一種。巨大さは、まるで家に手足が生えたかのようだった。  ジャン、メリッサ、クラウド、そしてこの僕――ディーサン。  Cランクの冒険者パーティ『ミスリルの団結』。  不躾な侵入者である僕たちを、目玉を震わせながら火竜は睨めつけ。がぱりと口を開いて。そして火の息(ブレス)を吐いた。 「グオハァアアアアアアアッ!!」  並の人間だったら、近くをかすっただけで身体が爆ぜてしまう熱閃を。  しかし―― 「うらあああ!『受・即・散』!!」 ――リーダーである盾師のジャンが、両手の盾の妙技で受け止め霧散させた。  熱は散らされ、魔力の残滓が、宙に結晶状の陽炎を残して消え失せる。それでも流石に無傷とはいかず、特にジャンは、体側から背中にかけて皮膚が炭化するほどの火傷を負っていた。  「『癒しの風(ヒール)』!」  それを治すのが、補助術師である僕の役目だ。     
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