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その間に剣士のクラウドが間合いをつめ、太い首に遮られた死角から、火竜に切りかかる。
「絶技『八種八撃』!」
まるで、別々の剣から発せられたような、それぞれ種類の異なる八つの斬撃。
それが、一瞬で火竜の鼻面に叩き込まれた。
「フグォオオオオオオッ!!」
火竜が、呻きのけぞる。
同時に、メリッサが詠唱が終える。
「……然るに遙か北の果て、氷結の大地の神よ、我に力を与えん。那由他の精霊を凝らせ止める絶対の力をもって、全てを凍てつかせたまえ――出よ『氷結の楔』!」
宙に氷の塊が現れ、見る間にかさを増していく――魔術の発動を横目で見ながら、僕は剣技の反動で千切れかけたクラウドの腱や靭帯を修復した。「『癒しの風』!」うん。うまくいった。
「こおおお………」
メリッサの呼気が太くなる。
いま僕らの前に浮かんでいるのは、氷の円盤。メリッサの魔術が出した、巨大な氷の円錐――その底部だ。そして当然、尖った先端が向かっているのは火竜。メリッサが大きく両手を広げ、豊かな胸を反らせる。円盤に法陣が浮かぶ。そこから噴き出すのは、無属性魔法独特の飴色の魔力。
水属性の魔法で出した氷の楔を、無属性魔法の推力で突き刺す。
それが、超高難易度魔法『氷結の楔』だ。
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