0人が本棚に入れています
本棚に追加
「……なんで、こんなに人がいるの」
月のない夜。思わずわたしは呟いて、冷たくなってきた手すりを掴んだ。ざらざらと錆が落ちるのも構わず、強く握りしめる。
「今日って何かお祭りでもあった? 盆踊り?」
しゃがみこんだ瀬奈が声をひそめて訊いてくる。
「お盆は先月。でも、今日って祝日でも何でもないただの週末だよ? それにこんな暗い寂れた場所に人が来るのもおかしいよ」
「あたしたちが言っても説得力がないね」乾いた笑みを作っていた瀬奈が急に真顔になった。「……ここにいる人、みんな幽霊とか」
「ゆっ――」
はじめはカップルがデートでたまたま歩いているだけだと思った。彼らが広場の隅に止めた車が走り去るまで、見つからないように屋上の真ん中に二人して隠れた。だが、時間が経つほどに、親子連れに老若男女と公園内に続々と人が集まり始めている。
最初のコメントを投稿しよう!