夜に堕ちる

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「……なんで、こんなに人がいるの」  月のない夜。思わずわたしは呟いて、冷たくなってきた手すりを掴んだ。ざらざらと錆が落ちるのも構わず、強く握りしめる。 「今日って何かお祭りでもあった? 盆踊り?」  しゃがみこんだ瀬奈が声をひそめて訊いてくる。 「お盆は先月。でも、今日って祝日でも何でもないただの週末だよ? それにこんな暗い寂れた場所に人が来るのもおかしいよ」 「あたしたちが言っても説得力がないね」乾いた笑みを作っていた瀬奈が急に真顔になった。「……ここにいる人、みんな幽霊とか」 「ゆっ――」  はじめはカップルがデートでたまたま歩いているだけだと思った。彼らが広場の隅に止めた車が走り去るまで、見つからないように屋上の真ん中に二人して隠れた。だが、時間が経つほどに、親子連れに老若男女と公園内に続々と人が集まり始めている。
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