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ぎぃと扉を開ける音に振り返ると、いつの間にかいなくなっていた瀬奈がスマホのライトを付けて戻ってきた。ブルーライトの明かりが彼女の金髪をより光らせている。
「あぶなー。まさかと思って入口に鍵をかけに行ったら、超ぎりぎりで中学生っぽい子たちが開けようとしてきたよ。……唯花?」
諦めるか、もう少し待つか。焦りと迷いが胸と頭の中を巡り始めていると、地上から歓声があがった。
そろそろと手すりに近づき、格子の間から地上を覗くと何人かがこちらを指さした、ように見えた。彼らの指先は、わたしのいる屋上よりも後ろの山に向かって高く、大きく顔を上げていた。
頭上にはいつもの夜空が広がっていた。ぼんやりとした視界で目を凝らすと、光度の高い恒星がいくつかが滲んで見える。天体が大きく滲むたびに地上の人たちが声を上げているような気がして、わたしは手探りで鞄を漁り、眼鏡かけて顔を上げた。
「あ」
呆然とするわたしの言葉を引き継いで、瀬奈がつぶやいた。
「流れ星……」
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