あっち ~もうひとつの物語~

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あっち ~もうひとつの物語~

山と山の間を右へ曲がったり、トンネルに入ったり、出ると少しまっすぐに進んだり、進んだと思ったら、今度は大きく左に曲がったりしながら、高速道路は器用に続いていく‥‥ 「だから、ウーロン茶飲んでたわけだ」 「車だからね」 「しかし、花が運転だもんなぁ。免許は? いつとったの?」 「結構、前だよ」 「なんだか、子供がハンドル持って遊んでるみたい」 「うるさいっ!」 「やっぱり、信じられない。運転とか‥‥花ってこういうことにすごく遠い人間だと思ってたのに」 「それは、わたしも思ってた」 「この車だって、うちの会社の営業車より大きいしさ。うちの会社の車、ちっちゃいんだよ。天井に頭ついちゃうぐらい」 「それは、自分が大きいからでしょ。この車にだってつきそうじゃん」 「へへ‥‥あっ、話、変わるけど、田中っ!」 「柔道部の!」 「あの飲み方は、酒じゃないな、もう水だよ水」 「自分っ、飲みますっ! みたいな」 「そういえば、知ってた? あの二人」 「あの二人?」 「村井と中里!」 「中里‥‥ああ、チロちゃんね」 「そう、そうだった。中里は、女子にチロって呼ばれてたな」 「二人が?」 「途中で消えたろ」 「消えた?」 「屋上にさ。二人で仲良く消えたんだよ」 「‥‥そうだったんだ。それは知らなかったけど別にいいじゃん、別れたとはいえ、あの頃は好き同士だった訳だし。久しぶりなんだし」 「‥‥そりゃ、まあな」 「そうだよ」 「あの二人の別れた理由、知らないの?」 「わからない。わたし、同じグループじゃなかったし」 「そうだな、花は、足立や渡辺とかと仲が良かったもんな」 「‥‥足立は相変わらず喋りまくりでうるさいし、フフ。なべ子とも会いたかったけど」 「用事?」 「うん、みたい‥‥でも、今日は楽しかった。本当に久しぶりに‥‥C組のみんなにも会えたしね」 「でも、クラス会としては時間早すぎだろ」 「教室を借りるんだからしょうがないよ。それにさ、わたし‥‥この時間だから参加できた訳だし。幹事やってくれたタケちゃん達に感謝だわ」 「‥‥まあ、よくあれだけ集めたよな」
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