時代を越えた親子の再会

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時代を越えた親子の再会

「そんなアホな、ハハハ、そりゃようけおりまっしゃろ。確かにおっしゃる通りやけど、そうやのうて…何ちゅうかこう、ぐーっと目が引きつけられましたんや。まるで夢で見たお坊はんがあなたがたのそばに立って、手招きでもしてるように思われて。矢も楯もなく運転手に‘おい、止まれ’と命じて仏縁に順じてもうた次第です、はい」と一気呵成に語って見せた。しかしなおも梅子が「本当に仏縁でしょうかね。もしかしたら魔縁、逆縁やも知れませんよ」と要らぬことを一言云う。どこかしらそう云わざるを得ないような観があった。「梅子」と亜希子がたしなめ「すみません、お話の腰を折ってしまって…どうぞ、続けてください」と話の先を乞う。皆と同様に話に引き込まれているようだった。  「(梅子に)いや、ハハハ、ひょっとしたらそうやも知れまへん。だったらひとつ堪忍してやってください。しかしとにかくお嬢様がたのそばに来てみたら、私には何かこう、どう云ったらええんやろ、なつかしいような…ちょうど長年ほったらかしにしとった家族に会(お)うたような…そんな気がしましたんねん。なぜですやろ?」と亜希子に向いてわざとらしく訊くのに「わかりません」と左手で口を覆い、右手を顔の前でふってその亜希子が苦笑する。無論まじめに訊いたわけではないだろうが敢て亜希子に尋ねたいという風情が鳥羽にはあった。しかしいかにもつかみどころのない話で、元よりそれを自覚している鳥羽は「いや、ハハハ、まったく。無茶苦茶なことを云うてもうて。若い娘(いと)はんらの前で。ほんまにしょうもない爺さんや。すんまへん。私、先ほども云いましたが鳥羽と申します。出版の会社に勤めてましたが今は定年退職して、楽隠居させてもろうてます。ひとつ、御縁いただけるようでしたら、よろしゅうお頼申しあげます」と長口上を終えた…。 「なんか不思議。お話をうかがっているうちに私もそんな御縁を感じました」と匡子が云い「ねえ、ほんとに。私もそう。ほほほ」と相方の慶子が受ける。「おとうさま、という気がします。たしかに」とまじめ顔で云う郁子も、またなぜか必要以上に恥ずかしがり、顔を上気させている(柄にもなく、である。ふだん決して取り乱さず、自分を失うことのない娘だった)亜希子も、さらには無言のままでいる織江と絹子も含めて皆一様に話に打たれている観があった。前述したが‘逆縁の’梅子でさえもそうである。
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