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私たちは、その時の選択を後悔する羽目になってしまった。その日の夜は雨予報になっていたわけではなかったのに、アユウ市内は雷雨に見舞われていた。それはまるで、今のアユウ市民の心を映し出しているかのように感じられた。明美野中学の生徒の失踪。それは、私を始めとする多くの市民の心に多大なる不安を与えてしまっているのではないかと個人的には思えた。暫く経ってから、一際明るい光が飛び散り、雷鳴が轟いた。それとほぼ同時に、私の母親の携帯に一本の電話が入った。それは、真鈴のお母さんからだった。私と母親は、同時に嫌な予感を感じた。その予感は当たって欲しくはない、そう思っていた。けれど、叶うわけはなくて。私のお母さんは恐る恐る「もしもし。」と応答し、電話に出た。すると、真鈴のお母さんのかなり焦った声が、電話越しに洩れ聞こえてきた。「うちの娘、まだそちらにお邪魔していませんか?私が家に帰ってきても誰もいなくて。真鈴、今日は岬ちゃんの家で勉強会なんだ!って張り切って出掛けて行ったし、岬ちゃんといると時間を忘れるって事を以前に言っていたので、昨日と同じように帰宅時間のことなんか忘れてそちらにいるのではないかと思って、連絡をしてみたのですが…。」という声が。私は、その話をお母さんを隔てて聞きながら、(マジか。真鈴、無事だといいんだけど…。真鈴だけじゃなくて、涼希くんも….。)と思っていた。その気持ちは母親も同じだったようで、いつもよりもほんの少しだけ低い声で、「それ、本当ですか?真鈴ちゃんなら、18時30分頃に帰ると言ったので、私たちで見送りましたが…。涼希くんのこともあって、車で送ろうかとも提案したんですが"まだ明るいし、バスも沢山いるから大丈夫。バス停も近くにあるので。"と断られてしまって。無理に乗せるのもどうかと思って送らなかったんですけど、送ればよかったですね…、すみません。」と謝って、その後に「涼希くんも真鈴ちゃんも無事だといいけど…。」と小さく呟いていた。真鈴の母親にその呟きが聞こえていたかは、わからないけど。
一旦会話途切れてから数秒後。真鈴の母親は、「謝らなくていいですよ。今回の一件は真鈴にも責任はあるので。」と答えた。そして、「でも」と前置きした上で、こう話し始めた。「今回の真鈴の事とその前の涼希くんの事ー。明美野中の生徒が立て続けに失踪していますよね。詳しくはわからないけ
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