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私は虫が大嫌いだ。小さい頃に虫系の妖に誘拐されたのがトラウマ。
「大丈夫だよ、東子」
「抱きしめてきてるのも今は許す! だから退治して!」
綺子ちゃんは冷静に、
「あたしも虫は嫌いだけど……確かにこれは異常な恐がり方ね」
「いやだああああキモイいいいい! 破片も残さず消して―!」
「はいはい、片付けるわよ」
綺子ちゃんが髪をほどいた。
あれ、シュシュに呪文が描かれてる……?
何の?
狐の耳としっぽが現れる。と同時にすさまじい妖気がほとばしった。
パニックも瞬時に治まるほどの妖気。シュシュは力を押えるアイテムだったのか。
妖も相手がケタ違いだと悟ったらしい。気圧されて震えてる。
「―――消えなさい」
妖は一瞬で炎に包まれた。
し、瞬殺。チリも残らない。
「さすがは九尾の妖狐だな」
「たいしたことないわよ、あんな雑魚。東子さんに分かるよう、わざと姿戻してみせただけ。……ああ、そうだ。これだけ量あるなら、ネットオークションよりここにひきとってもらったほうがいいわ」
チラシを出す。
「比良坂骨董店?」
「知り合いの店。いわくつきのブツを買い取ってくれるの。まだ未処理のが今後でてきても、始末もしてくれるわ。あっちもプロだから」
同業者とみた。
「あたしの紹介だって言えば、少し高めに買い取ってくれるでしょ」
「分かった。恩に着る」
九郎はチラシを折りたたんでポケットにしまった。
「手付金引いた残りの代金は後で振り込んでおく。とりあえず礼だ」
マカロンやアイシングクッキー詰め合わせを渡す。九郎お手製だ。
「あれ、狐なら油揚げじゃないの?」
「あたしは元人間よ。普通にかわいいもの好き。ていうか現代はおいしいものいっぱいあるし」
他にも食べたいよね。ところで綺子ちゃん。
「あのー、最後に一つお願いしても?」
「なに?」
「耳としっぽ、触らせて!」
絢子ちゃんは微妙な表情しながらも、触らせてくれた。
「ふわあああ、ふわふわ、もこもこー!」
キモいもん見た後だと余計に癒されたい。
にしてもかわいいなぁ。妖狐のちっちゃい美少女。うちの子にしたい。
「綺子ちゃんって名前の通り綺麗で羨ましい」
「名付け親は玉藻の前だけど。妖狐→妖の子→綺子って単純な理由よ」
「ええ?」
「東子さんだって、九頭の九郎の嫁だから十→十子→東子にしたって作者が」
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