四章 花の国のカラス姫

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 病にかかった麦を、どう世話していいかわからず、右往左往する人々がいた。病は手をかざしてやるとすぐに晴れたが、一時しのぎにしかならなかった。この力はこの島すべてで発揮してしまったがゆえ、そのすべてで力を振るい続けなくてはいけない。だがそれには、どうしても日数がかかる。どう考えても、この身一つでは足りようがなかった。すでに手遅れだった集落もいくつもあった。その中には故郷と同じく、住人同士の殺し合いに発展してしまった集落もあった。  ……どこにいっても、結果は同じだった。最後には、石の雨が降る。  助けられないのなら、最初から、助けないでほしかった。ある母親は、まだ産まれて数年の我が子を抱いてそう言った。おそらく、救いの手を差し伸べたからこそ、産まれて、そして死んでいった子供だった。  役立たず、裏切り者、信じていたのに。幼いときからずっと一緒だったという親友を、殺し合いの果て亡くしたと語った男はそう叫んだ。お前さえ来なければ、自分たちは細々と生きていけたんだ、殺し合わずに済んだんだと、彼は言う。  人々は、嘆き、怒り、そういった感情全部を、こちらに向けてきた。 (ああ、嫌だな)  ありがとう。何度もそう言っていたのに。数え切れないほどの人々に、そう言われてきたのに。求められたのに。よかれと思ってやっていたのに、人々はこぞって恨み節を口にする。  ここではない。ここにもない。……生きていける場所はない。いや、違う。人の中で過ごしたくないと、心が言っているのだ。  ――嫌いだ。  頼るだけ頼って、感謝すら述べていたくせに、こちらの話に耳を貸さず、裏切られたと思い込み、あらゆる汚い言葉を浴びせ、さらには暴力に訴える人のことなど、大嫌いだ。  でも、一番嫌いなのは、自分の短慮さが招いた結果だというのに、こんなことならば助けなければよかったと、いとも簡単に考えられるようになっている、自分自身だ。  ――わかっている。わかっている。  他者の意見もあった。だが、それに頷き、旅に出たのは、住んでいた場所を離れてしまったのはすべて、自分だ。  ……道すがら、見てしまった、もう動けない人の虚ろな目が、この目に焼き付いて、離れない。
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