僕らは常識の階段の上にいる

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「その後、私」  どうしたのだった? どうやってこの部屋に帰った? チラリと掛け時計を見ると、時刻はちょうど10時半になっていた。田辺を刺してからは約30分。その30分は、田辺を刺した場所からこの部屋まで徒歩で移動したらかかるだろう時間と合う。ということは、自分の足で部屋に戻った? 「……思いだせない」  そう呟き、ふと足もとを見る。血のついたストールが床に落ちていた。秋の朝夕の寒さ対策に、通勤バッグの中に常に入れているものだ。しかし田辺を刺した時、このストールはバッグの中だったはず。服についた返り血をこのストールで隠して帰ってきたのだろうか?  ピンポーン。  チャイムが鳴った。真美は体をびくりと震わせた。自らの体を抱いて身を固くし、息を詰め、部屋からは短い廊下を(かい)してある玄関のドアを見つめた。  ピンポーン。  最初のチャイムから1分ほど過ぎて、またチャイムが鳴った。ドアの向こうの相手が帰ったと思って、少し気を緩めていた真美は、ふたたび体をびくりとさせ、身を固くした。  ピンポーン。  3回目のチャイム。先のチャイムから、やはり1分ほどが過ぎていた。
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