第1章 ジャズの大海原に飛び込んで

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「この人、あたしの学校の先生なの! 矢島なぎさ先生っていうの! あたしと同じ髪の毛で、かわいいでしょ!」 「同じ髪型、ですね。そうですね、似合っていますよ。もうすぐジュースが来るから、お席に戻ってください」 「はーい! 先生、行こう!」  ウェイターさん、らみちゃんをあっさり操縦するとは、あなどれない。もしかして子持ち? 難しい子との付き合いに慣れてらっしゃる?  疑問たっぷりにウェイターさんを見つめたら、慇懃無礼な笑顔が返ってきた。 「ミュージシャンには個性的なかたが非常に多く、付き合いが難しいのですが、らみちゃんは子どもらしく正直で、非常に素直な女の子ですから」  読心術まで心得ていらっしゃる。らみちゃんさえ、ミュージシャンの皆さんよりはマシだと? 想像つかないわー。どうやらこのライヴハウス・デュークは魔窟のようです。  わたしは、らみちゃんに手を引かれて席に着いた。小さなテーブルを挟んで2つの椅子が置かれてたところに、小柄なウェイトレスさんがもう1つ持ってきた。 この席の配置って、つまり、らみちゃんには同行者がいるってことだ。さっきの芸能人並みのイケメンが来るんだろうか? 「ねえ、らみちゃん、あの……」 「先生先生、この席だったらね、ドラムがけっこう見えるんだよ!」 「え、ドラム?」     
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